はくち
白痴

冒頭文

親父は大酒飲みで、ろくすつぽ仕事もせず毎日酔つぱらつては大道に寝転び、村長でも誰でも口から出まかせに悪口雑言を吐き散らすのが無上の趣味で、母親は毎日めそめそ泣いて、困るんでござります困るんでござりますと愚痴つてばかりゐる意気地なしなのである。その又子供がろくでなしの揃ひで、長男は薄馬鹿以上の白痴で、二十六にもなるのに近所の子供に阿呆阿呆と言はれて、それが自分のほんとの名前であると思ひ込んでゐるし、

文字遣い

新字旧仮名

初出

「山桜」1935(昭和10)年5月号

底本

  • 定本 北條民雄全集 上巻
  • 東京創元社
  • 1980(昭和55)年10月20日