しがいをさんぽするひとのこころもち
市街を散歩する人の心持

冒頭文

東京の市街を、土曜日の午後あたり、明日は日曜だといふ安心で、と見かうみ、ぶらぶら歩るくほど楽しみなものはない。たとへば神田の五軒町あたりは、広い道の両側に柳の並木、日にきらめける鉄条の上をけたたましい電車の嵐、と思つて一寸道傍の店先を覗くと赤く汚れた温い硝子戸を越してお七、吉三の古い錦絵、その隣を乳房をあらはに髪を梳る女、銘は何れも歌麿筆としてある。 全体が青い調子の横に長い方形の景色絵

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻95 明治
  • 作品社
  • 1999(平成11)年1月25日