確かジムバリストの演奏会が在つた日の事だつたと思ふ。午後四時頃、それが済んで、帝劇を出た時は、まだ白くぼやけたやうな日が、快い柔かな光で、お濠(ほり)の松の上に懸(かゝ)つてゐた。 音楽の技巧的鑑賞には盲目(めくら)だが、何となしに酔はされた感激から、急にまだ日の暮れぬ街路へ放たれた心持は、鳥渡(ちよつと)持つて行きどころがない感じだつた。「さて、どうしようか。」と、僕たち二三人は行きどころに