『心』は大正三年四月から八月にわたつて東京大阪両朝日へ同時に掲載された小説である。 当時の予告には数種の短篇を合してそれに『心』といふ標題を冠らせる積(つもり)だと読者に断わつたのであるが、其短篇の第一に当る『先生の遺書』を書き込んで行くうちに、予想通り早く片が付かない事を発見したので、とう〳〵その一篇丈(だけ)を単行本に纏めて公けにする方針に模様がへをした。 然し此『先生の遺書』も自から独立