クロニック・モノロゲ
クロニック・モノロゲ

冒頭文

海岸の小さな貸別荘。 舞台は八畳と六畳の二間続きで、八畳には籐椅子、テーブルの他に本箱、寝台、六畳には、同じく寝台を中央に、箪笥、屏風、鏡台、衣桁、長椅子。 奥は一間の張出窓、硝子戸が締めてある。 長椅子に、女が倚(よ)りかゝつてゐる。女は毛糸の襟巻をし、腰から下を毛布で包み、紙人形をこしらへてゐる。 時々、歌を口吟(くちずさ)むのだが、すぐに息切れがするので、そのたびに、大きく溜息をつく

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸春秋 第十一年第一号」1933(昭和8)年1月1日

底本

  • 岸田國士全集5
  • 岩波書店
  • 1991(平成3)年1月9日