みやこどり
みやこ鳥

冒頭文

一 この正月の、西北の風が吹くある寒い朝、ちょっとした用事があって、両国橋を西から東へわたったことがあった。 橋のたもとから十五、六歩足を運んだ時、ふと水の上へ眼をやった。すると、大川と神田川が合流する柳橋の龜清(かめせい)の石垣の下の静かな波の上に、白いものが浮いているのを見た。私は、欄干(らんかん)によりかかって、しばらくそれに眺め入った。白いものは、かもめであった。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 完本 たぬき汁
  • つり人ノベルズ、つり人社
  • 1993(平成5)年2月10日