みずのへんろ |
水の遍路 |
冒頭文
それからというもの、私は暇さえあれば諸国を釣り歩いた。渓流、平野の川、海、湖水。どこであろうと、嫌うところなく釣りを楽しんだ。 故郷上州の水は、殊に親しみ深い。我が家の近くを、奥深い上越国境大利根岳から流れ出て、岩を削って迸(ほとばし)り、関東平野を帯のように百里あまりも悠々と旅してゆく利根川のことはここに説明するまでもない。片品川、赤谷川、湯桧曽(ゆびそ)川、谷川、宝川、楢俣川、薄根川
文字遣い
新字新仮名
初出
「釣りの本」改造社、1938(昭和13)年
底本
- 垢石釣り随筆
- つり人ノベルズ、つり人社
- 1992(平成4)年9月10日