ふゆのかじか
冬の鰍

冒頭文

冬の美味といわれるもののうち鰍(かじか)の右に出るものはなかろう。 肌の色はダボ沙魚(はぜ)に似て黝黒(ゆうこく)のものもあれば、薄茶色の肌に瓔珞(ようらく)のような光沢を出したのもあるが、藍色の肌に不規則な雲型の斑点を浮かせて翡翠(かわせみ)の羽に見るあの清麗な光沢を出しているのが一番上等とされている。川の水温と鰍は密接な関係を持っている。北風に落葉が渦巻いて、鶺鴒(せきれい)の足跡が

文字遣い

新字新仮名

初出

「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年

底本

  • 垢石釣り随筆
  • つり人ノベルズ、つり人社
  • 1992(平成4)年9月10日