びおんかい
美音会

冒頭文

十一月二十七日夜六時頃、先輩の生駒君と一緒に有楽座の美音会へ行ってみる。招待席は二階正面のやや左に寄った所を三側ばかり取ってあるが、未だ誰も見えていない。しかし、他の席は殆ど満員という有様で、廊下には煙草を口に銜(くわ)えた人が多勢行ったり来たり、立談している人もあって、その中に、美しく着飾った貴婦人達が眼を惹(ひ)く。有楽軒の食堂もかなり繁昌している。演奏開始までには未だ二十分も間があるので、菓

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 完本 たぬき汁
  • つり人ノベルズ、つり人社
  • 1993(平成5)年2月10日