ひょうこのわかさぎ
氷湖の公魚

冒頭文

トルコ人ほど水をよく飲む国民はない。水玉を一献舌端に乗せて、ころがすと、その水はどこの井戸、どこの湖水から汲んだものかをいい当てるほど、水に趣味をもっている。 わが国にも大そう水に趣味をもった人がいた。近江国琵琶湖畔堅田の北村祐庵という医者は、日ごろ茶をたてる時、下僕に命じて湖上から水を汲ませたが、その水の味によって汲み場を指摘したという。文化ごろ煎茶の流行した時代には数奇者(すきもの)

文字遣い

新字新仮名

初出

「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年

底本

  • 垢石釣り随筆
  • つり人ノベルズ、つり人社
  • 1992(平成4)年9月10日