しょかにざす
初夏に座す

冒頭文

人生の甘酸を味はひ分けて来るほど、季節の有難味が判つて来る。それは「咲く花時を違へず」といつた——季節は人間より当てになるといふ意味の警醒的観念からでもあらう。季節の触れ方は多種多様で一概には律しられないが、触れ方が単純素朴なほど、季節は味はふ人の身に染めるやうである。 この頃の季節の長所は明るく、瑞々しく、爽かなことである。たいがい憂愁も、しばし忘れさせて呉れる、常緑樹の重厚な緑のバツ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻14 園芸
  • 作品社
  • 1992(平成4)年4月25日