こせがれのつり |
小伜の釣り |
冒頭文
こうして私は、長い年月東西の国々を釣り歩いた。そして、五、六年前に、何十年ぶりかで故郷に帰り住むようになり、再び利根川の水に親しんだ。 もう、長男が十二、三歳になっていた。私が、亡き父に伴われては河原の陽(ひ)に照らされていた年頃である。子供が次第に大きく育っていくのを見るのは、何事にもかえがたい。その子が、不出来であろうが、まずい顔をしていようが、まず息災(そくさい)にすくすくと伸びて
文字遣い
新字新仮名
初出
「釣りの本」改造社、1938(昭和13)年
底本
- 垢石釣り随筆
- つり人ノベルズ、つり人社
- 1992(平成4)年9月10日