きせつのあじ
季節の味

冒頭文

物の味は季節によって違う。時至れば佳味となり、時去れば劣味となる。魚も獣も同じである。七、八両月に釣った鰔(はや)は、肉落ち脂去って何としても食味とはならない。十二月過ぎてからとった鹿は、肉に甘味を失って珍重できないのである。 日本人の食品材料は、およそ四百種あるそうである。それに、病的といおうか悪食といおうか、いも虫、ヒル、みみずの類を生のまま食う者があるが。これらを加えたならば驚くべ

文字遣い

新字新仮名

初出

「釣りの本」改造社、1938(昭和13)年

底本

  • 垢石釣り随筆
  • つり人ノベルズ、つり人社
  • 1992(平成4)年9月10日