とねがわのあゆ
利根川の鮎

冒頭文

人生の旅 これは、私が十八、九歳のころ考えたことである。そして今もなお、それを想っているのである。 六十歳といえば、人生の峠の頂を過ぎた。しかし、まだ我が人生の旅は遠くいつまでもいつまでも寂しく続いてゆくであろう。根(こん)も張(は)りも尽き果てた疲れを負って歩く、灰色の路の我が人生の旅の行方を想うと、堪え難く寂しく悲しい。 前途に希望はないのである。我が力を顧みれば、大きな望みを持てな

文字遣い

新字新仮名

初出

「つり人」1948(昭和23)年4月~5月

底本

  • 垢石釣り紀行
  • つり人ノベルズ、つり人社
  • 1992(平成4)年11月20日