しょくしだん
食指談

冒頭文

一 蕎麥は、春蕎麥よりも秋蕎麥の方が、味香共に豊かであると昔からいわれているが、その理屈はともかくとして、このほど上州赤城の中腹室沢の金子豊君から贈って貰った秋蕎麥は、近年まれにおいしかった。老妻が麺棒を握って額から汗を流している間に、私は疎開のとき東京から持ってきた霞網を麥田と菜畑との間に張って雀数羽を獲り、これを汁のなかへ入れて雀蕎麥を作ったところ、これが甚だ珍味であったのである。折柄、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 『たぬき汁』以後
  • つり人ノベルズ、つり人社
  • 1993(平成5)年8月20日