二、三日前、隣村の老友が私の病床を訪れて、例の「しゃもじ」がまた出たという。 貴公が、出あったのか。 いや、僕ではない、近所の青年が度胆(どきも)を抜かれよった。 さては、彼の狸め、今もって頑健であるとみえるな。 怪物「しゃもじ」のことについては拙著「狐火記」のうちに書いておいたが、しかしこのような剽軽(ひょうきん)な変化(へんげ)は、二度と再び出るものではあるまいと当時考えていた