さるがきょう
猿ヶ京

冒頭文

このほど、元代議士生方大吉君の案内で東京火災保険の久米平三郎君と共に、上州と越後の国境にある三国峠の法師温泉の風景を探ったのである。途中、猿ヶ京の部落を過ぎたが、車中で生方君から人間の真情について、まことに珍しい、そしてほんとうに羨ましい話をきいた。 猿ヶ京には、幕府の関趾があった。徳川時代、越後や出羽方面の諸大名が、江戸へ参観(さんきん)交代に罷り出るには、越後路から三国峠を越えて必ず

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 『たぬき汁』以後
  • つり人ノベルズ、つり人社
  • 1993(平成5)年8月20日