にんぎょうとおおかみ |
| 人形と狼 |
冒頭文
お腹の空いた狼が野道を歩いて来ますと、遠くに一人の赤ん坊が寝ているのを見つけました。狼は大喜びで走って来てみると、それは誰かが落した大きな人形でした。 「ええ、この役立たず奴(め)が」 と狼はあと足で蹴散らかしました。 「乃公(おれ)のたべ物にならない位ならば何だって人間の形をして生まれて来た」 人形はニコニコして答えました。 「お気の毒様ですね。あなたのように何でも可愛がる事を知らないもの
文字遣い
新字新仮名
初出
「九州日報」1923(大正12)年11月9日
底本
- 夢野久作全集7
- 三一書房
- 1970(昭和45)年1月31日