ドン
ドン

冒頭文

たいそうあたたかくなりました。 猫が久し振りにあたたかくなったので縁側に出て見ると、縁側の鉢の中にいる金魚が五、六匹チラチラしています。これは占めた、どうかして取って食べてやろうと思ってジッと鉢の中を狙いました。 犬がこれを見つけて、これはうまいと思いました。ふだんから憎らしいと思う猫が今日は全く気がつかずにいる。今度こそは引っ捕えてひどい目に合わせて遣ろうと、猫に気のつかぬよ

文字遣い

新字新仮名

初出

「九州日報」1923(大正12)年3月7日

底本

  • 夢野久作全集7
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年1月31日