おちゃのゆまんぷくだん
お茶の湯満腹談

冒頭文

久し振りに上京すると感心する事ばかりである。音のないゴーストップに面喰らい、自動車の安いのに感心し、警視庁の親切なのに恐れ入るなぞ、枚挙に暇あらず。少々痛め付けられ気味で、故郷へ帰りかけている処へ、或る人のステッキ・ボーイとなって相州小田原、板橋の益田孝男爵のお宅を訪問する事になった。 益田男爵と言えば人も知る三井の大久保彦左衛門で、兼、日本一の茶人である。名ある財界の大立物は勿論の事、

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸通信」1935(昭和10)年4月

底本

  • 夢野久作全集7
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年1月31日