おそろしいとうきょう
恐ろしい東京

冒頭文

久し振りに上京するとマゴツク事や、吃驚させられる事ばかりで、だんだん恐ろしくなって来る。田舎にいると、これでも相当の東京通であるが、本場に乗り出すと豈計らんやで、皆から笑い草にされる事が多い。 横浜から出る電車は東京行ばかりと思って乗り込んで、澄まして新聞を読んでいるうちにフト気が付くと大森林の傍を通っているのでビックリした。モウ東京に着く頃だがハテ、何処の公園の中を通っているのか知らん

文字遣い

新字新仮名

初出

「探偵春秋 2巻2号」1937(昭和12)年2月

底本

  • 夢野久作全集7
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年1月31日