いぬのおうさま
犬の王様

冒頭文

むかしある国に独り者の王様がありました。家来がどんなにおすすめしてもお妃(きさき)をお迎えにならず、お子様もない代りに一匹の犬を育てて毎晩可愛がって、「息子よ息子よ」とよんで、毎日この犬を連れては山を歩くのを何よりの楽しみにしておいでになりました。 そのうちに王様はちょっとした病気で亡くなられましたが、その御遺言には「俺が死んだら息子を王様とせよ。そうしたら俺が妃を迎えなかったわけがわか

文字遣い

新字新仮名

初出

「九州日報」1922(大正11)年12月

底本

  • 夢野久作全集7
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年1月31日