けうのはんざい
稀有の犯罪

冒頭文

一 悲劇というものは、しばしば、まるでお話にならぬような馬鹿々々しい原因で発生するものであります。ほんの一寸(ちょっと)した出来心や、まったく些細ないたずらから、思いもよらぬ大事件を惹き起すというようなことは、よく物語などにも書かれているのであります。 これから私が御話しようとするのも、やはり馬鹿々々しい原因で、三人の宝石盗賊がその生命を失う物語であります。というと、察しのよい読者

文字遣い

新字新仮名

初出

「週刊朝日 特別号」1927(昭和2)年1月

底本

  • 探偵クラブ 人工心臓
  • 国書刊行会
  • 1994(平成6)年9月20日