アーニイ・パイルのまえにたちて
アーニイ・パイルの前に立ちて

冒頭文

ネオンの中に明滅する追憶 私は、「アーニイ・パイル」の横文字が、淡い、うす緑の五線紙型ネオンサインの色彩の中に明滅するのを、ジッと見詰めていた。眼がしらが熱くうるおいそめて、にじみ出して湧いてこぼれて来る涙を拭く気にもなれない。誰れも見て居らない、泣けるだけ泣いてやれ、という心持ちであったかもしれない。私は、頬のあたりまで持っていったハンカチを再び下げて、唇を押えたまま、暫らくジッと佇んで居

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 宝塚漫筆
  • 阪急電鉄
  • 1980(昭和55)年2月15日