「ダブックウ」ひょうりゅうき
「太平洋漏水孔」漂流記

冒頭文

竜宮から来た孤児 前作「天母峯」で活躍した折竹孫七の名を、読者諸君はお忘れではないと思う。 アメリカ自然科学博物館の名鳥獣採集者(コレクター)として、非番(オフ)でも週金五百ドルはもらう至宝的存在だ。その彼が、稀獣矮麟(オカビ)を追い、麝牛(マズク・オクゼン)をたずね、昼なおくらき大密林の海綿性湿土(スポンジ・ソイル)をふみ、あるいは酷寒水銀をくさらす極氷の高原をゆくうちに、知らず

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1940(昭和15)年2月号

底本

  • 世界SF全集 34 日本のSF(短篇集)古典篇
  • 早川書房
  • 1976(昭和51)年7月15日