ひらがげんないとりものちょう はぎでらのおんな
平賀源内捕物帳 萩寺の女

冒頭文

十六日の朝景色 薄い靄(もや)の中に、応挙風(おうきょふう)の朱盆(しゅぼん)のような旭(あさひ)がのぼり、いかにもお正月らしいのどかな朝ぼらけ。 出尻伝兵衛(でっちりでんべえ)、またの名を「チャリ敵(がたき)」の伝兵衛ともいう、神田鍋町(なべちょう)の御用聞。 正月の十六日は、俗にいう閻魔(えんま)の斎日(さいじつ)。 商売柄、閻魔参りなどに行く義理はない。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本探偵小説全集8 久生十蘭集
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 1986(昭和61)年10月31日