こんちゅうず
昆虫図

冒頭文

伴団六は、青木と同じく、大して才能のなさそうな貧乏画かきで、地続きの古ぼけたアトリエに、年増くさい女と二人で住んでいた。 青木がその裏へ越して以来の、極く最近のつきあいで、もと薬剤師だったというほか、くわしいことは一切(いっさい)知らなかった。 職人か寄席芸人かといったように髪を角刈(かくがり)にし、額を叩いたり眼を剥(む)いて見せたり、ひとを小馬鹿にした、どうにも手に負えない

文字遣い

新字新仮名

初出

「ユーモアクラブ」1939(昭和14)年8月号

底本

  • 日本探偵小説全集8 久生十蘭集
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 1986(昭和61)年10月31日