こつぼとけ
骨仏

冒頭文

床(とこ)ずれがひどくなって寝がえりもできない。梶井はあおのけに寝たまま、半蔀(はじとみ)の上の山深い五寸ばかりの空の色を横眼で眺めていると、伊良がいつものように、「きょうはどうです」と見舞いにきた。 疎開先で看とるものもなく死にかけているのをあわれに思うかして、このごろは午後か夜か、かならず一度はやってくる。いきなり蒲団の裾をまくって足の浮腫(むくみ)をしらべ、首をかしげながらなにかぶ

文字遣い

新字新仮名

初出

「小説と読物」1948(昭和23)年2月号

底本

  • 日本探偵小説全集8 久生十蘭集
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 1986(昭和61)年10月31日