よしんちょうしょ
予審調書

冒頭文

一 「あなたの御心配もよくお察ししますが、わたしの立場も少しは考えて頂かないと困ります。何しろ、規則は規則ですから、予審中に御子息に面会をお許しするわけにもゆきませんし、予審の内容を申し上げることも絶対にできないのですからねえ。こんなことは、私が申し上げるまでもなく十分おわかりになっているでしょうが……」 篠崎(しのざき)予審判事は、裁判官に特有の冷ややかな調子で、ここまで言って、ちょっと

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1926(大正15)年1月

底本

  • 新青年傑作選第一巻(新装版)
  • 立風書房
  • 1991(平成3)年6月10日