たに

冒頭文

楢渡(ならわたり)のとこの崖(がけ)はまっ赤でした。 それにひどく深くて急でしたからのぞいて見ると全くくるくるするのでした。 谷底には水もなんにもなくてただ青い梢(こずえ)と白樺(しらかば)などの幹が短く見えるだけでした。 向う側もやっぱりこっち側と同じようでその毒々しく赤い崖には横に五本の灰いろの太い線が入っていました。ぎざぎざになって赤い土から喰(は)み出していた

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 新編風の又三郎
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1989(平成元)年2月25日