じゅうがつのすえ
十月の末

冒頭文

嘉(か)ッコは、小さなわらじをはいて、赤いげんこを二つ顔の前にそろえて、ふっふっと息をふきかけながら、土間から外へ飛び出しました。外はつめたくて明るくて、そしてしんとしています。 嘉ッコのお母さんは、大きなけらを着て、縄(なわ)を肩(かた)にかけて、そのあとから出て来ました。 「母(があ)、昨夜(ゆべな)、土ぁ、凍(し)みだじゃぃ。」嘉ッコはしめった黒い地面を、ばたばた踏(ふ)みな

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 新編風の又三郎
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1989(平成元)年2月25日