さいごのしょうりしゃはたぞ
最後の勝利者は誰ぞ

冒頭文

人生は戦争の歴史なり。刀鎗銃剣は戦争にあらず。人生即ち是れ戦争。世を殺せし者必らずしも虚栄に傲(ほこ)る勝利者のみにはあらじ、力ある者は力なき者を殺し、権(けん)ある者は権なき者を殺し、智ある者は智なき者を殺し、業(げふ)ある者は業なき者を殺し、世は陰晴常ならず、殺戮(さつりく)の奇巧なるものに至つては、晴天白日の下(もと)に巨万の民を殺しつゝあるなり。銃鳴り剣閃めき、戦血地を染め、腥風(せいふう

文字遣い

新字旧仮名

初出

「平和 二號」平和社(日本平和會)、1892(明治25)年5月18日

底本

  • 現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集
  • 筑摩書房
  • 1969(昭和44)年6月5日