つりずきいんきょのざんげ |
| 釣好隠居の懺悔 |
冒頭文
中川の鱸(すずき)に誘(おび)き出され、八月二十日の早天(そうてん)に、独り出で、小舟を浮べて終日釣りけるが、思はしき獲物も無く、潮加減さへ面白からざりければ、残り惜しくは思へども、早く見切りをつけ、蒸し暑き斜陽に照り付けられながら、悄々として帰り途(みち)に就けり。 農家の前なる、田一面に抽(ぬ)き出でたる白蓮の花幾点、かなめの樹の生垣を隔てゝ見え隠れに見ゆ。恰も行雲々裡に輝く、太白星の如し
文字遣い
新字旧仮名
初出
底本
- 集成 日本の釣り文学 第二巻 夢に釣る
- 作品社
- 1995(平成7)年8月10日