がんじつのつり
元日の釣

冒頭文

上 元日に雨降りし例(ためし)なしといふ諺は、今年も亦中(あた)りぬ。朝の内、淡雲天(そら)を蔽ひたりしが、九時ごろよりは、如何にも春らしき快晴、日は小斎の障子一杯に射して、眩しき程明るく、暖かさは丁度四五月ごろの陽気なり。 数人一緒に落合ひたりし年始客の、一人残らず帰り尽せるにぞ、今まで高笑ひや何かにて陽気なりし跡は、急に静かになりぬ。 机の前の座に着けば、常には、書損

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 集成 日本の釣り文学 第二巻 夢に釣る
  • 作品社
  • 1995(平成7)年8月10日