いずのたび
伊豆の旅

冒頭文

汽車は大仁(おほひと)へ着いた。修善寺通ひの馬車はそこに旅人を待受けて居た。停車場を出ると、吾儕(われ〳〵)四人は直に馬車屋に附纏はれた。其日は朝から汽車に乘りつゞけて、最早(もう)乘物に倦んで居たし、それに旅のはじめで、伊豆の土を踏むといふことがめづらしく思はれた。吾儕は互に用意して來た金でもつて、來出るだけ(ママ)斯の旅を樂みたいと思つた。K君、A君、M君、揃つて出掛けた。私は煙草の看板の懸け

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「太陽」1909(明治42)年4月

底本

  • 現代日本紀行文学全集 東日本編
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年8月1日