よづり
夜釣

冒頭文

これは、大工、大勝(だいかつ)のおかみさんから聞いた話である。 牛込築土(うしごめつくど)前の、此の大勝棟梁のうちへ出入りをする、一寸(ちょっと)使へる、岩次(いわじ)と云つて、女房持、小児(こども)の二人あるのが居た。飲む、買ふ、摶(ぶ)つ、道楽は少(すこし)もないが、たゞ性来の釣好きであつた。 またそれだけに釣がうまい。素人(しろと)にはむづかしいといふ、鰻釣の糸捌(いとさ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新小説」春陽堂、1911(明治44)年

底本

  • 集成 日本の釣り文学 第九巻 釣り話 魚話
  • 作品社
  • 1996(平成8)年10月10日