とうきょうわんかいぶつたん
東京湾怪物譚

冒頭文

一 観音崎と富津(ふっつ)岬とが相抱いた東京湾口は、魚の楽園らしい。どんな魚でもゐる。それは餌が豊富であるのと、潮の流れが生きてゐるためであると思ふ。 浦賀港から二三里三浦半島の突端の方へ寄つた下浦などは、黒鯛(くろだい)の避寒(ひかん)地だとされてゐる。夏の間、江戸前や横浜附近の海で遊んでゐた黒鯛は、晩秋から初冬になるとぞろ〳〵揃つて下浦へ避寒にでかける。なか〳〵しやれてゐる

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 集成 日本の釣り文学 第九巻 釣り話 魚話
  • 作品社
  • 1996(平成8)年10月10日