かまくらいっけんのき
鎌倉一見の記

冒頭文

面白き朧月のゆふべ柴の戸を立ち出でゝそゞろにありけばまぼろしかと見ゆる往來のさまもなつかしながら都の街をはなれたるけしきのみ思ひやられて新橋までいそぎぬ。終りの列車なるにはや乘れといふにわれおくれじとこみ入れば春の夜の夢を載せて走る汽車二十里は煙草の煙のくゆる間にぞありける。 蛙鳴く水田の底の底あかり 藤澤の旅籠屋を敲いて一夜の旅枕と定む。朝とく目さむれば裏の藪に鳴く鶯の一

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 現代日本紀行文学全集 東日本編
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年8月1日