ちょうみんこじいずくにかある |
兆民居士安くにかある |
冒頭文
多くの仏学者中に於てルーソー、ボルテールの深刻なる思想を咀嚼(そしやく)し、之を我が邦人に伝へたるもの兆民居士を以て最とす。「民約篇」の飜訳は彼の手に因(よ)りて完成せられ、而して仏国の狂暴にして欝怏(うつあう)たる精神も亦た、彼に因りて明治の思想の巨籠中に投げられたり。彼は思想界の一漁師として漁獲多からざるにあらず、社会は彼を以て一部の思想の代表者と指目せしに、何事ぞ、北海に遊商して、遠く世外に
文字遣い
新字旧仮名
初出
「評論 十三號」女學雜誌社、1893(明治26)年9月23日
底本
- 現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集
- 筑摩書房
- 1969(昭和44)年6月5日