ばくまついしんかいこだん 38 ぞうげぼりぜんせいじだいのはなし
幕末維新懐古談 38 象牙彫り全盛時代のはなし

冒頭文

その時分の私の住居(すまい)は、下谷西町三番地(旧立花家の屋敷跡の一部)にありました。大溝渠(おおどぶ)を前にした一室を仕事場にして、其所(そこ)で二年ぶりに手入れをした道具を備え、いよいよ本職の木彫りをもって世に立つことにしたのであります。 私が、本当に他人の手から離れ、全くの独立で木彫りを家業として始めたのはこの時からであります。されば、自然と私の心も爽々(すがすが)しく、腕もまた、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 幕末維新懐古談
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1995(平成7)年1月17日