ばくまついしんかいこだん 36 あぶらつちやせっこうにこころをひかれたはなし |
幕末維新懐古談 36 脂土や石膏に心を惹かれたはなし |
冒頭文
ちょうど、その時分、虎(とら)の門際(もんぎわ)の辰(たつ)ノ口(くち)に工部省で建てた工部学校というものが出来ました。噂(うわさ)に聞くと、此校(ここ)では西洋人を教師に傭(やと)って、絵や彫刻を修業しているのだということ、絵は油絵であり、彫刻は西洋彫刻をやっているのだという評判……そういう話を聞くと、私はそれを見たくて仕方がないが、しかし見るわけにも行かぬ。生徒には藤田文三氏、長沼守敬(ながぬ
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 幕末維新懐古談
- 岩波文庫、岩波書店
- 1995(平成7)年1月17日