あのころ ――おさなものがたり――
あのころ ――幼ものがたり――

冒頭文

父 私が生まれたのは明治八年四月二十三日ですが、そのときには、もう父はこの世にいられなかった。 私は母の胎内にあって、父を見送っていたのであります。 「写真を撮ると寿命がない」 と言われていた時代であったので、父の面影を伝えるものは何ひとつとてない。しかし私は父にとても似ていたそうで、母はよく父のことを語るとき、 「あんたとそっくりの顔やった」 と言われたも

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 青眉抄・青眉抄拾遺
  • 講談社
  • 1976(昭和51)年11月10日