イマジネーションとそうしょくのび それをもつとくしゅのこせいによっていかさるべし
想像と装飾の美 それを持つ特殊の個性によって生かさるべし

冒頭文

日本画を以(もっ)て写実の道を歩こうとする事は根本から間違っている。日本画を以て写実を行うよりは駱駝(らくだ)の針の穴を通る方がやさしいといいたい位である。この意味で今日の新らしい日本画は殆(ほとん)ど皆駄目だ。物欲しそうな感じしか与えられない。 写実の道を歩みたいのなら諸君の前には至極便利な油画具(えのぐ)がもう五、六十年も前から輸入されてある。一度日本画具を使って日本画師として立った

文字遣い

新字新仮名

初出

「国粋 第二号」1920(大正9)年11月

底本

  • 岸田劉生随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1996(平成8)年8月20日