私の父親は、近村近郷きつての呑ん平であつた。いま、私も甚しい呑ん平である。子供のときから今日まで、六十余年の間呑み続けてきた。 母親は、少年の私が酒を呑むのを見ると、きつい叱言を喰した。だが、父は反対に奨励の傾向を持つてゐた。このごろ私は、一升九百二十五円といふ高価の酒を呑んで、生活の胸算用に苦しんでゐるのである。こんな高い酒にめぐり会はないで早く死んだ吾が父親は、まことに幸福者であると