けせんぬま
気仙沼

冒頭文

女川から気仙沼へ行く気で午後三時の船に乗る。軍港の候補地だといふ女川湾の平和な、澄んだ海を飛びかふ海猫の群団が、網をふせた漁場のまはりにたかり、あの甘つたれた猫そつくりの声で鳴きかはしてゐる風景は珍重に値する。湾外の出嶋(いづしま)の瀬戸にかかるとそこらの小嶋が海猫の群居でまつ白だ。此鳥の蕃殖地としては青森県の蕪嶋(かぶしま)が名高いが、此の辺にもこんなに沢山棲んでゐようとは思はなかつた。彼等はい

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆79 港
  • 作品社
  • 1989(平成元)年5月25日