一 またしても大阪の話である。が、大阪の話は書きにくい。大阪の最近のことで書きたいような愉快な話は殆んどない。よしんばあっても、さし障りがあって書けない。 「音に聴く大阪の闇市風景」などという注文に応じてはみたものの、いそいそと筆を取る気になれないのである。 ——と、こんな風にまえがきしなければ、近頃は文章が書けなくなってしまった。読者も憂鬱だろうが、私も憂鬱である。書かれる大阪も憂鬱であろう