1 ホテル・アムステルダムの女主人(マダム)セレスティンは、三階から駈け降りて来た給仕人(ボーイ)の只ならぬ様子にぎょっとして、玄関わきの帳場から出て来た。 巴里人らしい早口で、 「何をあわてているんです、ポウル」 給仕人のポウルは、これも巴里人らしく鷹揚に眼を円くして、 「三階の十四号室へ朝飯(プチ・デジュネ)を運んで行ったんですが、扉が固く閉まっていて、い