あくいんねんのうらみ
悪因縁の怨

冒頭文

一 天保銭(てんぽうせん)の出来た時代と今と比べると、なんでも大変に相違しているが、地理でも非常に変化している。現代で羽田(はねだ)というと直ぐと稲荷(いなり)を説き、蒲田(かまた)から電車で六七分の間に行かれるけれど、天保時代にはとてもそう行かなかった。 第一、羽田稲荷なんて社(やしろ)は無かった。鈴木新田(すずきしんでん)という土地が開けていなくって、潮の満干のある蘆(あし)の

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 怪奇・伝奇時代小説選集5 北斎と幽霊 他9編
  • 春陽文庫、春陽堂書店
  • 2000(平成12)年2月20日