きょうかのこむすめどうじょうじ
京鹿子娘道成寺

冒頭文

序 筆者が、最近、入手した古書に、「娘道成寺殺人事件」なるものがある。 記された事件の内容は、絢爛(けんらん)たる歌舞伎の舞台に、『京鹿子娘道成寺』の所作事を演じつつある名代役者が、蛇体に変じるため、造りものの鐘にはいったまま、無人の内部で、何者かのために殺害され、第一人称にて記された人物が、情況、及び物的証拠によって、犯人を推理する——というのである。 記述の方法は、う

文字遣い

新字新仮名

初出

「探偵春秋 第二巻第六号」春秋社、1937(昭和12)年6月

底本

  • 幻の探偵雑誌4 「探偵春秋」傑作選
  • 光文社文庫、光文社
  • 2001(平成13)年1月20日