おおしまゆき
大島行

冒頭文

一信 思ひたつた旅ながら船出した咋夜(ゆうべ)から今朝にかけて、風雨激しく、まぢかく大島の火の山が見えてゐながら上陸が仲々困難でした。本當は、夜明けの五時頃にはもう上陸が出來るはずなのに、十時頃までも風力の激しい甲板の上に立つて、只ぢつと島裾を噛んで行く、白い波煙を見てゐるより仕方もありませんでした。 遠くから見るとまるで洗つたすりばちを伏せて、横つちよに葱でも植ゑてあるやうな、そ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 現代日本紀行文学全集 東日本編
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年8月1日